【漫画】吉住 渉『ハンサムな彼女』を思い出と共に紹介します
ブログを書くようになって、映画や小説、日用品などのレビューや紹介などを書いてきたのですが、そういえば漫画について書いたことないなーというわけで、書いてみることにしました。
大人になって買い集めている漫画もあるのですが、数が少ない上にまだ連載中だったりするので、一旦、原点である子供の頃に戻って、今回は吉住渉さんの『ハンサムな彼女』を紹介したいと思います。
吉住 渉『ハンサムな彼女』
『ママレード・ボーイ』『ミントな僕ら』などで知られる吉住渉さんの作品。
少女漫画雑誌「りぼん」で1988年~1992年まで連載されていた、芸能界を舞台にした青春漫画です。
あらすじ
萩原未央は四ツ葉学園芸能科に籍を置く中学生女優。
幼馴染の俳優・森本輝臣への恋心から同じ芸能界での仕事をしている未央だったが、ある日、未央や親友でアイドル歌手の沢木彩、そして輝臣も出演する学園ドラマに同い年で映画監督志望、アメリカ留学帰りの熊谷一哉が演出家として参加することになり、一哉から一人だけ厳しく演技指導を受け反発を覚える。
しかし、「女優」である未央への真摯な態度と理解し、自分の腰掛け的な態度を反省。今まで以上に真剣に女優の仕事に取り組み、一哉とも距離を縮めていく。
『ハンサムな彼女』の思い出や魅力
私は漫画雑誌は「りぼん」派で、当時リアルタイムでは小花美穂さんの『こどものおもちゃ』や種村有菜さんの『神風怪盗ジャンヌ』などが連載されていました。
吉住さんの作品では『ミントな僕ら』が連載中だったかと思います。
吉住渉さんといえば、やはり『ママレード・ボーイ』が有名で、私もコミックスを全巻持っていました。
そして、たしかその『ママレード・ボーイ』のコミックス内の販促ページかなにかで『ハンサムな彼女』の存在を知り、コミックス購入に至りました。
芸能界や女優の世界への憧れと現実
この作品は、ヒロインは女優、中心人物はみんなアイドルや俳優、演出家などばかりで、華やかな芸能界を舞台にしています。
学園生活も芸能科のある学校という特殊な環境が描かれ、そのキラキラした特別な世界に多くの少女たちが魅了されたのではないかと思います。
よく少女漫画にありがちな、美人で可愛いくせに「冴えない普通の女の子☆」みたいな矛盾もなく(笑)、みんな芸能人だし、そりゃみんな美男美女だぜ、って感じです。
そうしたキラキラ感もありながら、ただ「芸能界キラキラ☆」という感じでは終わらず、それぞれの仕事への向き合い方や苦悩などの描写が丁寧に行われていたのが、この作品に深みを持たせ、多くのファンを生み出していたのかなと思います。
「ハンサム」な彼女のかっこよさ
中学生くらいの私にとって、「ハンサム」という言葉は単に「かっこいい男性」を示す言葉でしかなかったので、それを女性に使うそのこと自体が、抜群にかっこよく感じられました。
そして、芸能界という大人の世界で仕事を持つヒロインたちや、初めてのデート(?)で古い映画を見に行くという大人びた描写が、この作品自体を「ハンサム」な印象にしていました。
作中での「ハンサムな彼女」のイメージはマレーネ・ディートリヒという昔の女優さんで、甘い魅力を持つマリリン・モンローなどが「チーズケーキ」と呼ばれるのに対して、マレーネ・ディートリヒのような女性は「ハンサム」だと一哉は言います。
前述した古い映画は、このマレーネ・ディートリヒの半生を描いたドキュメンタリー作品『マレーネ』。
当時はよくわからないまま、ふんふんと読み進めていたのですが、せっかくのなので、この『マレーネ』や他の出演作品なども見てみたいです。
中高生向きの少女漫画のアイコンの1つとして、中高生は知らないような古い名女優を出すというのも、なかなか渋くてかっこいいですよね。
そして、もちろんヒロイン未央自身も、容姿・性格ともに、「ハンサム」に描かれていて、読みながら憧れていたものです。
男の子たちの魅力
『ハンサムな彼女』では女性もそうですが、男性たちもハンサムで魅力的です。
メインの一哉、そして一哉の親友でカメラマンの可児くん、アイドルグループのメンバー篤紀、一哉に恨みを持つバンドマンの聖(ちなみにこのバンドの名前が「トラフィック・ジャム」で、当時その響きや交通渋滞という意味合いもなんとなくかっこいい!と思い、今でもIDなどに使用しています(笑))など、それぞれが自分の夢や仕事に一生懸命で、若くして信念を持って行動する子ばかりです。そして、みんな癖はあるものの優しい。
私は特に可児くんがお気に入りでした。関西弁なのも良かった。
可児くんに出会って、その後しばらく関西弁フェチみたいになってました(笑)
色々なタイプの魅力的な男の子に好かれて大変!みたいなのは少女漫画の醍醐味の1つですが、後の『ママレード・ボーイ』などを見ても、吉住さんは魅力的な男性を描くのが上手いなと感じます。
それぞれとのエピソードや心理描写が丁寧に描かれているので、ヒロインや男の子たち一人ひとりに共感できるのがとても良いなと思います。
『ハンサムな彼女』は、中学生くらいの私には大人びた、ハンサムな漫画でした。
作りこまれたストーリーや丁寧な描写で、大人でも楽しめる作品だと思います。
今度はマレーネ・ディートリヒのことも少し勉強して、もう一度読み返してみます!
久々に思い出すと、昔買った漫画もまたどんどん読み返したくなりますね(笑)
大人になった今、どんな世界を見せてくれるのか楽しみです。
圧力鍋初心者が電気圧力鍋「ワンダーシェフ」を使って、枝豆のポタージュを作ってみました
皆さん圧力鍋って使ったことありますでしょうか?
すごい時間短縮ができるらしいということは知っていたのですが、実家でも所持しておらず、私は今まで全く無縁でした。
しかし最近、恋人が新しく電気圧力鍋なるものを買ったとのこと。
というわけで今回は、圧力鍋初心者な私が電気圧力鍋で料理してみた様子と感想をご覧ください。
ワンダーシェフ 電気圧力鍋
今回使用したのは、「ワンダーシェフ」というメーカーの圧力鍋シリーズの1つで、コンロにかけるタイプではなく、コンセントから電源をとって使用するタイプの電気圧力鍋です。
容量は4Lで、2~4名分くらいの調理にぴったりのサイズになっています。
電気圧力鍋に加え、蒸しす、計量カップ、しゃもじ、小さいおたま、ガラス蓋、そしてレシピ集がついていて、初心者にも優しいです。
レシピ集
こんな感じのレシピ集がついてきます。
炊飯からカレーや煮物、離乳食まで幅広く50個のレシピが掲載されています。便利。
枝豆のポタージュスープ
今回は、上記のレシピ集の中から、「枝豆のポタージュスープ」を作ってみました。
理由はポタージュとか作ったことがなかったので、興味本位です。
レシピ集の中はこんな感じで、どのボタンを押せばいいかも一目でわかりやすくなっています。(詳しいレシピは画面外に切れてしまっていますが)
早速調理開始です!
1.枝豆をゆでる
まずは枝豆を鞘ごとゆでます。(ここは普通のお鍋で調理)
2.材料を圧力鍋に投入⇒スイッチオン!
枝豆・玉ねぎ(粗みじん切り)・バター・コンソメ・水を投入。
豆を鞘から出すのが地味に面倒でした。
そして圧力鍋のスイッチを入れます!
今回は「お好み」ボタンで15分に設定しています。
圧力がかかるまで約10分程度。そこから設定した15分間加圧してくれます。
圧力がかかっている間は、ピンクのピンが飛び出して教えてくれます。安心です。
3.圧力鍋から一旦材料を取り出し、裏ごし
加圧後の材料。玉ねぎはクタクタで、枝豆は形が残っています。
バターの香りがしました。
裏ごしします。こし器を持っていないので、ザルとボウルで代用しました。
結構時間がかかりました。
(ミキサーをお持ちの方は、ミキサーで混ぜてもOKだそうです。)
4.再度圧力鍋に戻し、牛乳を加え追加熱
こした材料です。
圧力鍋に戻しいれ、牛乳を追加。真っ白になりました。
「追加熱」で5分間加熱します。
これは圧力調理ではなく、ただの加熱です。(加圧用の蓋はしない)
普通の鍋で煮立てても良いのかもしれません。
5.味を調えて完成!
最後に生クリームを入れて、塩コショウやコンソメ等で再度味を調えました。
カップに移して、完成です!
ザルでこしたので、結構粒感の残る感じではありましたが、ちゃんとポタージュスープになっていました!
初めての割にはちゃんとできたと思います。
枝豆を先に茹でたり、裏ごししたりと少し手間がかかりますが、レシピ自体は結構単純で、初心者でも簡単に美味しくできました。
使ってみての感想
材料を入れて、蓋をして、スイッチ入れて待つだけなので、思った以上に簡単でした!
初心者でもなんの問題もありません。
また、圧力鍋はたまに事故があったりして、ちょっと怖いという気持ちもあったのですが、電気制御で時間も勝手にはかって調節してくれますし、ピンで加圧具合を教えてくれたりと、調理中不安を感じることもありませんでした。
調理時間が終われば音で知らせてくれて、しかも一旦自動で保温に切り替わってくれるので、ワンダーシェフで調理中は別の作業に集中できて便利です。コンロも1台あきますし。
レシピ集もわかりやすく、レパートリーも多く有難いです。
と、ワンダーシェフの回し者みたいになっていますが、実際便利で使いやすいものだと思います。
ただ、一点だけ、通常の圧力鍋より少し圧力が低い(60kpa)そうなので、調理時間の短縮を第一に考えている方は微妙かもしれません。
実際、私がイメージしていたよりも結構時間がかかるなと感じました。
例えば、カレー4人分だと30分の加圧が必要です。(レシピ集を参照しています)
加えて圧力がかかるまで10分程度かかるので、それだけで40分かかります。
ただ、前述の通り、調理中完全に手を離して大丈夫なので、その間に別のものを作ったり、別の作業をしたり、そういう意味では時短にも効果的かなとは思います。
あとは、レシピに載っていないレパートリーを増やせるか、というところもちょっと気になりました。
私は料理をすごくするわけではなく、圧力鍋も初心者なので、レシピ集以外のものが作れるかな、とちょっと心配です。
でも今どきネットもありますし、使い慣れてくれば、時間設定の感覚なども掴めて、自然と幅も広がるような気がします。
すっかりワンダーシェフの宣伝みたいな記事になっちゃいましたが、別に回し者とかではないです(笑)
結構長いこと料理をさぼっていたのですが、やってみるとなかなか楽しいですね。
せっかく新しいアイテムもあるので、どんどん使って、新しいレパートリーにも挑戦していこうと思います。
とりあえず、次はご飯を炊いてみたいです。
【特別お題】優等生から派遣・契約社員、ニートになるまで、そしてこれから
昔から何かを選ぶことが苦手でした。
何かを選んで、そのときに捨てなければならない何かがもったいないような気がして、取り返しのつかないミスをおかしているような気がして、選択を先延ばし先延ばしにしてきました。
無難な選択はなにかを考えながら、でも内心は自分を認めてほしくて、やりもしないくせに「やればできる子」なんだとずっと自分に言い訳をし続けて、現実から、選択から逃げ続けてきました。
いま、29歳になって、私はニートで、未婚で、ビジョンもありません。
それでも時間は過ぎるし、ぼんやり過ごしていても、私はまた歳を取り、来年にはもう30歳になります。
今回は、「今週のお題」がSK-Ⅱさんとのコラボ企画で特別お題「『選択』と『年齢』」ということなので、ちょっと真面目に自分のことを振り返り、これからについて考えてみようと思います。
風が吹いていた小中高時代
私はかつて優等生でした。
小学生の時からそこそこ勉強ができて、割と真面目で、かと言って大人しすぎるわけでもなく、先生方に好かれる子供でした。
中学、高校と行きたいと思えるところがあり、受験をして無事希望通りの学校に進みました。
中学では放送部もなかったのに朗読を始めてコンクールで入賞したり、高校では部活で朗読を続けながら、全国規模の高校生の会議に参加したりと、自分で言うのもなんですか「良い子」で「自慢の娘」だったと思います。
そして私自身、とても楽しく、充実した毎日を過ごしていました。
やりたいことがあればやりたいと、手を挙げられていたからだと思います。
この頃の私は、いつも自分のやりたいことに素直に、チャンスがあれば突っ込んでいくような生き方をしていました。
それはきっと、自分への自信と、選択肢を与えてくれる環境のお陰だったと思います。
私は自分が「出来る子」で「特別」だと思い込んでいました。
中学も高校も、色々と新しいことや幅広い分野に挑戦する学校でした。
色々な方向へ風を吹かせて、いつでも生徒たちが動けるように可能性を広げてくれていました。
私は自分の船の様子を見ながら、その風に乗っているだけで良かった。
あそこに行きたいと言えば、時に先導してくださる先生方もいた。
両親も私がやりたいことは、ほとんどやらせてくれた。
こうして私は、多くのアシストを受けながら、可能性の海を縦横無尽に走り回っていたのです。
風が凪ぎ始めた大学選び
充実した生活を送っていた高校生の私ですが、初めて深く選択に悩んだのは大学選びでした。
高校までは自分の住んでいる場所の中で、しかも専門分野など特に選ぶ必要はなかったので、かなりスムーズに自分の希望を決められていました。
しかし、大学を選ぶとなると選択肢は膨大な数になります。
所在地、大学、学部、学科。
決めるべきことはたくさんあるのに、そのとき私の頭に浮かんだのは、とりあえず文系ということだけでした。
実家を離れるのか、離れるとしてどこまで行くのか。九州?関西?東京?
学部は文学部?心理学部?教育学部っていう手もあるかもしれない。
私は恐らく、このとき初めて、自分にビジョンがないことに気がつきました。
いえ、本当は、ずっと抱えていた夢はありました。
夢を追うために勉強しようと思えば、専門の大学を受験するという選択肢もありました。
しかし、夢の世界は狭き門で、私にはその選択肢を選ぶ勇気がなかった。
私は自分で自分の夢を諦めてしまったのです。
夢をビジョンとして定めることができなかった私は、なにを目指せば良いのかわからなくなってしまいました。
風は凪ぎ、私の船は停滞していました。あー、やばいなー、と漠然を感じていました。
そんな時、外から風が吹いてきました。
高校の先生から、ぴったりの学部があると声をかけて頂いたのです。
推進力を取り戻した私は、その風に乗りぐんぐん進みました。
そうして無事に、大学というひとつの港にたどり着くことができました。
あの時私が声をかけて頂けたのは、やりたいことをやって、動き回っていたからだろうと思います。
一瞬風は凪いだけれど、それまでの船旅の軌跡が、なんとか私をもう一度押し進めてくれるきっかけになったのだと。
同じところを回り続けた大学生活
そうして入学した大学では、学部の友達と遊んだり、サークルに入ったり、バイトをしたり、本当に楽しくすごしました。
初めての一人暮らしにも慣れ、モラトリアムを謳歌しまくっていました。
しかし、今思えば、あの頃の生活はとても充実していたけれど、私は大学生活でなにか成長できたのかな、と後悔する部分も大きいです。
いろんな人と出会って、授業やサークル活動や、遊びもバイトも満喫していたと思います。やりたいことも色々とやりました。
でもあの頃私の船は、同じところをずっとぐるぐると回り続けていただけで、どこにも向かっていなかったような気がします。
私には、自分の未来がなにも見えていませんでした。
見えていないことに焦りながらも、探そうともしていませんでした。
ずっと、いつか風が吹くのを待っていたように思います。
大学選びで迷っていた時、先生が答えをくれたように。
しかし、高校のときと違って、私は風を起こす種をまくこともできていませんでした。
しかも、なにも成し遂げたことがない自分に焦りながらも、「特別だったはずの自分」への幻想も消えず、周りの言うことも素直に聞けなくなってきていました。
怠惰で、視野の狭い、ダメ人間になってしまっていました。
無理やり船を漕ぎ出してみた社会人時代
結局私は、ビジョンが見えないと言いながら、真面目に就職活動をすることもなく卒業し、そのまま一旦派遣社員になりました。
とりあえずお金は稼がなくては、と思ったからです。
ケータイのコールセンターの仕事で、時給は悪くなかったのですが、精神的に辛く、半年ほどで辞めてしまいました。
それから1ヶ月ほど貯金を食いつぶしてダラダラ過ごし、またこのままでまずい、と思って今度は契約社員として働き始めました。
この仕事は5年程続きました。私の前職です。
この社会人時代に私が持っていた気持ちは、「お金を稼がなくては、食べていかなくては」とほとんどそれだけでした。
特に前職は拘束時間が長く、その割に給料は低く、休みの日は寝てばかりいました。
働いて休むだけの日々で、お金も貯まらず、またどこにも行けていないと感じました。
しかも、今回は大学生活と違って、楽しくもありません。
無理やり漕ぎ出してみたものの、なんの見通しもない私の船は、毎日浜と浅瀬を行ったりきたりして、結局どこにもたどり着かないようでした。
しかも、なまじぎりぎりでも生活できてしまっているために、ずっとその浜から離れられないような気持ちになってきました。
辞めよう、と久しぶりに私は選択をしました。28歳。
凪いだ海の真ん中でばしゃばしゃとあがくニートな現在
そして今、ニートになり、3ヶ月ほどが過ぎました。29歳になりました。
辞めた時はワクワクしていました。
環境が変われば、人生も変わるという安易な期待がありました。
これだけ人生を怠惰に過ごして後悔したくせに、まだ風を待とうとする愚かな自分がいました。
やっと今、私が変わらなければ、なにも変わらないということを、じりじりと感じ始めました。
無理やり会社という浜を離れて、浅瀬から沖まで出てきたのですが、相変わらず凪いでいて、相変わらず焦っています。
しかし、ほんの少しずつですが、私自身も変わり始めているのではないかなと思います。
このブログを始めて、1ヶ月と少し。
プライドばかり高くて、発信することを怖がっていた私が、全く見る人もいなかった状態で、誰にともなく文章を書くことができるようになりました。
6月下旬からは毎日、多少不完全な状態でも表に出そうと、続けることができるようになりました。
今はまだ、だからなんだと思うような、ただの自己満足の段階でしかありませんが、とりあえず、言い訳をしてやらないのではなく、始めれらたこと、続けられていることを自信に繋げていきたいです。
今は、今までやってこなかった分、ばしゃばしゃと格好悪くあがく時期だと感じています。
先延ばしにしてきた分、色々なつけが回ってきている部分もありますが、私は働きたいし、結婚したいし、趣味を楽しみたいし、幸せに生きたい。
こうやって宣言して、不恰好な自分を晒しながら、少しずつでも前に進みたいと思います。
過去の怠惰や失敗を悔やんでも、今はもう変わらないし、後悔して悩んで立ち止まっている間に、さらに状況は悪くなる。
いつだって、今がベストだと思って進まなくては。
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7/14追記
昨日、この記事がはてなブックマークの新着エントリー入りし、多くの人に見て頂くことができました!(昨日だけで118PVでした。)
初の新着入りでとても嬉しかったので、追記しておきます(笑)
読んで頂いた方、スター・ブックマーク頂いた方、ありがとうございました!
1件、はてブでコメントを頂いていたので、コメント返しを。
id:orangetrione 仕事するのに気合い入れた事なんか一度も無い気がする。でも張り詰めて切れちゃう人をたくさん見たので俺はこれで良いや。良く言えば「足るを知る」になるかな?ならんか
「足るを知る」大事ですよね。
でも、私の場合はまだ「足る」ところまでもいけてない気がして。なにもがんばれてないじゃん、という。
orangetrioneさんにとって、人生において仕事はそこまで重要なファクターじゃないのかな、と感じました。
私も仕事自体にそんなに重点を置いていなかった(食べていければいいやという感じで)のですが、私の人生の時間をこんなに使うなら、もっと自分が楽しめることできるようにしないと損だと思って今模索しています。
人生においての優先順位を見極めて、時間や能力を使っていきたいなーと思っています。
ハンガーにかけたまま!アイロンスチーマーを試してみて感じた良い点・悪い点
最近は晴れの日が続いていて、洗濯ものが気持ちよく乾きます。
やはり部屋干ししたものとはちょっと違いますね!
さて、洗うのは洗濯機がやってくれますし、干すのもそこまで時間はかからないのですが、取り込んでからってちょっと面倒ですよね。
仕分けて、アイロンかけて、畳んで仕舞って。
特にアイロンがけは不器用な私にはなかなか時間がかかってしまいます。
普段、プレスアイロンを使用しているのですが、最近ハンガーにかけたまましわを伸ばせる「アイロンスチーマー」なるものが流行っていると聞いて使ってみることにしました。
MOFIR 衣類スチーマー
まず、今回使用したのは、MOFIRというメーカーの衣類スチーマーです。
amazonなら2000円ととってもお得なお値段でした。
が、巷で人気のティファールやパナソニックなどの大手メーカーのものと違い、プレス面がついていたりするわけではなく、少し平らになった先端部分から蒸気が出てくる、という非常にシンプルな作りのものです。
その代わり(?)低出力モードがあり、そちらであれば顔などにも使えるようです。
使い方
使い方はとっても簡単で、電源コードをさし、本体に水をいれ、スイッチを入れるだけです。
水をMAXまで入れても1分程で沸騰し蒸気が出始めます。
あとは、ハンガーにかかった衣服を引っ張りながら蒸気を当てていきます。
わかり辛いですが、蒸気が出ています。
このような感じで蒸気を当てていきます。
結果
ちょっとわかり辛いですが、左が使用前、右が使用後です。
細かいしわが消えています。
別の衣服でも。こちらはだいぶわかりやすいかと思います。
感想
実は本当にしわが伸びるのかかなり半信半疑だったので、意外と綺麗になってびっくりしています。
よほどピシっと伸ばさなければいけない時以外は、これで充分に役割を果たせます。
ただ、いくつか不便な点もあったので、良い点・悪い点をそれぞれまとめてみました。
良い点
- アイロン台などの準備がいらない
- 衣類の材質によってはプレスアイロンより断然早い(柔らかいもの、薄いもの)
- 変なしわや折り目がつきにくい
- ぬいぐるみなど衣服以外にも使用可能
- 高温スチームによる脱臭効果などが期待できる
以上のように、やはり手軽に使える点と、材質にもよりますが、短い時間で済むという点は大きな利点かなと思います。
ハンガーにかけたまま使えるので、普段からハンガーにかけて衣服を仕舞われている方には特におすすめかなと思います。
また、私は使用していませんが、ぬいぐるみなどの形の違うものにも使用できるのは、お子様のいらっしゃるご家庭などでは利点の1つになるかと思います。
悪い点
- 衣服を引っ張りながらかける必要があるため、すそなど端っこの部分は伸ばしづらい
- ズボン類などそのままではハンガーにかけ辛いものは工夫が必要
- 厚手の生地や、深いしわが入ってしまっているものは時間がかかる(しわが残ることも)
- 水の容量が少ないため、何度も給水が必要(ふた部分が熱い、再加熱が必要なため時間もかかる)
- ずっとかけていると腕が疲れる
薄手、柔らかめの生地には便利ですが、厚手だったり、しわが深いものには効果が薄かったり、時間がかかってしまいます。
また、慣れるまでは、なかなか使いづらいなと思ってしまいました。
水の容量に関しては、この製品しか使っていないのでわかりませんが、水を入れるたびに(数分ではありますが)時間をおく必要があるので、そこのタイムロスがせっかくの利便性をちょっと損ねてしまっているかなと感じました。
まとめ
服自体の素材や構造によって、向いているもの向いていないものがあるようなので、どちらか一方というより、スチーマータイプ、プレスタイプの2種類をうまく使い分けるのが一番便利かなと思いました。
ただ、今回使用したものは、プレス面のないものだったので、形の違うものであれば、また使用感はだいぶ違うかもしれません。
また、アイロンスチーム、プレスアイロンの2種類の使い方が出来る製品なども出ているようなので、そういった製品を試してみるのも良いかもしれません。
夏本番で、洗濯物も増える時期に入ります。
Tシャツやワイシャツなどの普段使いの衣服にはなかなか便利かなと思うので、気になる方はぜひ試してみてくださいね!
それでは、溜まっているアイロンがけでもしようと思います。
詩人だった私
高校生になってしばらくたったある日、私は恋をしました。
正確には、恋をしていることに気がつきました。
初恋は小学生のときに卒業しましたし、中学時代も好きな人はいました。
でも、この恋は今までとは違う、とすぐに気がつきました。初めての真剣な恋でした。
毎日毎日その人のことを考えて、少しでも構ってもらえると嬉しくて。
私の高校生活は、部活動とあの恋がほとんどを占めていました。
こう書くとすごく青春っぽいですね。
高校生になって、初めて真剣な恋に落ちた私は、まだ中学生に毛が生えたような幼い心の中に、溢れ続ける恋心を持て余していました。
親友に相談しても、夜中にベッドの中で身悶えても、想いはどんどん湧き出してきました。
そんなある日、ネットサーフィンをしていた私はあるサイトを見つけました。
なにを検索していたのかはもう思い出せませんが、恐らく「好き」だとか「恋愛」だとか「片思い」だとか、多分そんなことです。
私が見つけたそのサイトは『ザ掲示板』という掲示板サイトのスレッドの1つでした。
タイトルは伏せますが、恋する気持ちをポエムにして語る、という主旨のスレッドでした。
今こうして書くと少し恥ずかしいですね。
しかし、このとき見つけたこのスレッドが、高校生の間、私のことをひっそり支えてくれていました。
初めての書き込みは、やっぱりすごく緊張していました。
他の人のレスを読み込んで、たくさん考えて投下しました。
優しい人が多くて、挨拶や感想を返してくれました。
それから私は掲示板の中でだけ、詩人になりました。
自分の中の収拾のつかない気持ちの渦を、詩に、言葉にして吐き出し続けていました。
たくさんの顔の見えない仲間ができて、同じような境遇、同じような気持ちを抱える人たちとたくさん話をしました。
そして臆面もなく「恋心」を「ポエム」にして語り合えるような人たちがいることに、恋愛の面だけではなく、とても救われていました。
『ザ掲示板』は一旦閉鎖してしまい、ログもなくなったと思っていたのですが、現在はFC2に運営が譲渡され、過去ログも見ることができるようになっていました。
スレッドの名前も、自分のハンドルネームも、忘れたと思っていましたがちゃんと覚えていました。
久々に自分の書き込みを見ました。
あの頃の私は、なんて一生懸命で可愛かったんだろうと思いました。
いくつもいくつも、本当にたくさんの詩を投稿していました。
知らない人たちと自分の心の奥を見せ合い、まっすぐに、思った言葉を並べていたあの頃。
読んでいて恥ずかしくなる書き込みばかりですが、読めば読むほど、あの頃の出来事や気持ちがまざまざと甦ってくるのを感じました。
私の記憶が、ネットの海の中にひっそりと沈んでいるのだと思うと、なんだか少し安心するような、有難いような気持ちになります。
私が忘れてしまっても、この海の底にあって、たまにキラキラと光ってあの頃の気持ちを運んできてくれるんだな、と。
あれからもう10年以上経って、大人と言われる年齢になったけれど、今でもあの頃のまま、恋愛に不器用に苦しんでいるのが可笑しいです。
少し図太くなって、出来ることも少し増えたけれど、できなくなってしまったことも多いです。ポエムを書いてみたり、自分のことをまっすぐ話してみたりとか。
でもきっとそんなことも、あの頃の私ができていたのなら、出来ないふりをしているだけで、もしかしたら出来るのかもしれないと、そう思うことができました。
またどこかネットの海にひっそりと、言葉を書き付けるのも良いかもしれない。
あの頃みたいに素直に、やりたいことをやることができるかもしれない。
あの頃の私は、私の中にいる。
詩人だったあの頃の私が、詩人ではいられなくなってしまった私に、たまにはひたって書くのもいいんじゃないのと言ってくれた気がして、恥ずかしさにドギマギしながら、でもとても穏やかな気持ちで、この文章を書いたのでした。
大好きな映画『花とアリス』を紹介します!
今日はずーっとブログのネタが思い浮かばすに午後になり、頭真っ白で焦っていました。作家や漫画家の先生たちってこんな感じなんでしょうね(おこがましい)。
そうこうしている内に、ふと、以前ブログで『花とアリス』について詳しく紹介する記事を書く!と言っていたことを思い出しました。
(ちなみにそのときの記事はこれでした。)
というわけで、今回は私が大好きな映画『花とアリス』を紹介させてください。
『花とアリス』(2004年 / 日本)
『Love Letter』や『スワロウテイル』で知られる岩井俊二監督による長編映画。
前年にキットカットの発売30周年記念としてWEBで公開されていた同タイトルの短編映画をもとにして作成されている。
高校生の花とアリスの友情と初恋の繊細な季節を、美しい音楽と映像で綴る、ちょっと不思議な青春映画です。
あらすじ
中学生のアリス(有栖川哲子)は、ある日電車内で高校生に一目惚れし、親友の花(荒井花)を強引に誘い出して彼をこっそり尾行する。そのうちに花はその高校生の友達である宮本に恋をしてしまい、アリスの熱が冷めた後も、ひっそりと宮本を尾行する毎日を送っていた。
中学を卒業し、宮本と同じ高校に進学した二人。花は宮本と同じ落語研究会へ入部し、ある帰り道、尾行していた宮本がシャッターに激突して意識朦朧となったのを良いことに、自分が宮本の彼女であると勘違いさせることに成功する。一方アリスは、スカウトされたことをきっかけに、オーディションに通っては落とされる日々を送っていた。
あるとき、花の長年の隠し撮り写真の存在が宮本にばれ、それをごまかすために元カノのアリスが送りつけてきたと嘘をつく。嘘を補強するために、アリスは嘘の元カノ役を引き受け協力するも、そのことで宮本はアリスに惹かれてしまい、3人は三角関係となってしまう。
『花とアリス』の魅力
本当に本当に大好きな作品で、何度も見返しています。
ストーリー、映像、音楽。全てが素晴らしくて、まだ見たことのない方にはぜひ!見て欲しいです!!
魅力だらけの作品なので、いくつかにわけて紹介します。
少し不思議な世界観
まず、この作品の魅力はなんといってもその世界観かなと思います。
普通に高校生の友情や恋愛を描いているのですが、なぜだか非日常的な空気を纏っています。
1つには、気絶した宮本を記憶喪失に仕立てあげるという、いやいや、と思ってしまうようなストーリーが、この物語を少し現実から遠ざけています。しかし、そんなのすぐばれるでしょ、と思いながらも、作中では違和感なくその世界にひたることができます。
宮本とのデート中、手を洗っている最中に水が出なくなり、泡だらけの手のままでデートを続行する花など、ちょっとしたエピソードも、少しずつ現実からの浮遊感をもたらします。
また、その美しい映像も、この作品を夢のように非現実的に見せます。
特に雨の中やスタジオでのアリスのバレエシーンや、アリスと宮本のデートシーン、また、花・アリス・宮本の三人で浜辺でトランプをするシーンなど、はっとするほど美しい映像が散りばめられています。
冒頭の電車内やバレエ教室などの日常のシーンも静かに美しく、当たり前でありながら、やはりどこか現実味を欠く映像に仕上がっていると思います。
私の好きなお笑いコンビ「ラーメンズ」の「非日常の中の日常を描く」という言葉を知ったとき、あ、『花とアリス』もこれだ、と思いました。
私の知っている日常とは少し違う場所を日常として生きる人たちがいて、その人たちの日常を見ているんだな、となんとなく感じるような、少し不思議な雰囲気を纏った映画です。
繊細でリアルな描写
この作品には、基本的に悪い人は登場しません。
みんな優しくて、すれ違いはあるけれど、安心して見ていられます。
花とアリス、花と宮本、アリスと宮本、アリスと父親、花とアリスとその友達。
色んな関係性が描かれますが、全てふんわりとした優しさがあります。
ただ、それで甘いだけの作品にはなっていません。
ぼかした優しさがあるわけではなく、人物の心情を丁寧に描き出し、繊細な心の動きを捉えています。
花とアリスと宮本の関係性ではもちろんなのですが、中でも、アリスと父親のシーンが私は好きでです。
アリスの両親は離婚していて、アリスは母親と一緒に暮らしています。
そして父親とはたまに二人でデートします。
はじめはぎこちない二人ですが、だんだんと慣れて、楽しく過ごします。
別れ際に父親に、教わったばかりの「ウォーアイニー」という言葉を投げかけます。
デート中はずっと、高校生の娘らしい少しクールな様子で話していたアリスが、父親に向けて「愛している」と伝えるこのシーンは、作中でも屈指の名場面の1つだと思っています。
非日常感があると、前段では書きましたが、それはあくまでも世界観の話で、ディテールや心情の描写の面は、本当に繊細で緻密に描かれている作品だと思います。
役者たちの熱演
この映画では、主役の花とアリスにそれぞれ鈴木杏と蒼井優、三角関係のお相手宮本に郭智博を起用しています。
他にもアリスの父に平泉成、バレエ教室の先生に木村多江など、演技派の俳優さんたちが多く出演し、みなさんとても良い演技を見せてくれています。
特に、花、アリス、宮本の三人は、自然な青春の雰囲気を壊さずに、ファンタジー的な非現実感をうまく引き受けた演技で、本当に素晴らしいと思います。
一見荒唐無稽に見えるようなシーンでも、リアルな空気を失わずにいたのは、この三人の熱演あってこそではないかと感じました。
鈴木杏さんの花は、ちょっと偏執的で、でも一途で一生懸命な女の子をよく表現していて、特に最後に文化祭の舞台袖で泣きながら告白するシーンは、見ているだけでこちらまで胸が痛くなるようで、本当に素晴らしかったです。
蒼井優さんのアリスは、明るくさばけて、しっかり者で、それでいながら胸の奥に寂しさを抱える様子が伝わってきました。また、バレエシーンも美しく、私はこの映画で蒼井優さんのファンになりました。
郭智宏さんの宮本。ちょっと頼りない、変わり者の男の子で、難しい役柄だったのではないかなと思うのですが、若干漫画的なそのキャラクターを現実感のあるものに仕上げていたなと感じました。
素朴で美しい音楽
最後に、この作品は音楽も素敵です。
静かで素朴ながらも少しくせのあるメロディーが、作品をさらに鮮やかにしています。
ちなみに、全ての曲を岩井監督ご自身で作曲されたそうです。すごい。
今まで映画を見て、歌なしの楽曲でここまで音楽の印象が強い作品はなかったので、ご覧になるときは、ぜひ音楽にも注目してみてください。
『花とアリス』、本当に素晴らしい作品です。
この記事でその素晴らしさが少しでも伝わっていると嬉しいのですが。
私の中で間違いなくNO.1に好きな映画なので、これを読んで興味を持ってくださった方がいれば、ぜひ見てみてください!
好きなものの紹介を書くのは楽しいですね。ついつい長くなってしまいました(笑)
また別の映画や小説なども紹介していけたらなと思います。
【小説】沼田 まほかる『彼女がその名を知らない鳥たち』を読みました
読み終わった後に、気持ちがざわざわする作品ってありますよね。
説明できないけれど、なんだかざわついてしまう作品。
今回はそんな気持ちがざわざわする小説に出会ったので紹介します。
沼田 まほかる『彼女がその名を知らない鳥たち』(2006年)
主婦、僧侶、経営者を経て、50代で初めて書いた小説で文学賞の大賞を受賞しデビュー。そんな異色の経歴を持つ、「イヤミス」の旗手・沼田まほかるの作品。
今秋、本作を原作とした映画公開も決定している。
8年前に別れた黒崎のことを忘れられずにいる十和子は、寂しさから15歳年上の陣治と共に暮らしている。生活の一切を陣治の世話になりながらも、下品で野卑な陣治に激しい嫌悪感を覚え辛く当たる十和子。歪んでいながらも離れられず共に暮らす二人だったが、ある日十和子に知らされた黒崎の失踪から、歪みはさらに加速していく。
沼田さんの著作は読んだことがなかったのですが、今回は映画宣伝の帯の蒼井優さんがきっかけで手に取りました。蒼井優さん大好きなんです。
また、『彼女がその名をしらない鳥たち』というタイトルもなんだか綺麗で、あらすじを読んだところ面白そうだったため購入。
沼田さんは、後味の悪いミステリー「イヤミス」で有名のようなのですが、まさに、という感じでした。
主要な登場人物は十和子、陣治、黒崎、そして十和子の不倫相手の水島の4人なのですが、4人が4人ともそれぞれどこか異常で、共感性に欠くキャラクターとして描かれています。
誰にも共感できないまま、しかし、十和子や陣治の孤独に擦り切れる感情に、なんとなく身に覚えがあるような気もしてしまいました。
わかるようなわからないような、そんな中で進んでいく、気持ちがざわざわする小説です。
結末は、後味は良くないですが、物語の瞬間瞬間にはある種の救いがあったように感じました。
※ここからは作品の核心部分、ネタバレを含みます。ご注意ください。
曲者だらけの主要人物たち
十和子は、陣治に生活の面倒を見てもらっているにも関わらず、陣治を嫌悪し、邪険に扱い、元彼黒崎のことを心に残しながらも、妻子ある水島と不倫する、という一言でいって最低の女性です。
陣治はくちゃくちゃと物を食べたりと下品で、大手の建設会社に勤めていたことだけを心のよすがにしている、うだつの上がらない男です。
仕事の飲み会で出会った十和子に対してしつこく迫り、同居するようになってからも、1日に何度も電話をかけたり、十和子が不倫をするようになると、後を付けまわすようになります。
ただ、陣治は十和子だけを想い続け、その執着心は異常とも言えるものの、この作品の主要人物の中で、唯一気持ちを感じられる人物でした。
そして、十和子の元彼の黒崎と、不倫相手の水島。この二人は、似たタイプのクズ野郎です。黒崎は自身の成功のために、水島は性欲を満たすために、都合の良い言葉で十和子を騙し、利用します。
このように、基本的にこの作品には素直に共感できるキャラクターはいません。
しかし、不快感を抱えながら読み進めていく中に、たまに見え隠れする十和子と陣治の一瞬の普通の優しい時間が、きらりと閃いて、物語を一瞬だけ照らし出します。
その一瞬、暗闇にどんな景色が浮かぶのか、それを見届けるためにページを繰らずにはいられなくなる作品でした。
十和子という人物
十和子は、上記の通り身勝手で最低な女性ですが、同時に可哀想な人でもあると思います。
陣治という、身近で本当に十和子を大事にしてくれる人がいるにも関わらず、その人の想いに気づけず、自分を安く扱うような人を自分の大切な人だと思い込みます。
十和子の心のねじれが黒崎の裏切りに端を発しているなら、十和子は黒崎に投げ捨てられたことで、それから先の多くの幸福をも一緒に失ってしまったのかもしれないと感じました。
彼女は心のどこかで陣治を受け入れ、愛しく想い、安心を感じていたのに、そのことを自分で受け入れることができなかったのかなと思います。
陣治といる今は仮の生活で、いつか黒崎のような、水島のような、「価値の高い」男が、自分を選び、引っ張りあげてくれるのだと思い続けていました。
もしかすると、黒崎によって奈落の底に突き落とされた自分自身が、本当はもっと「価値の高い」人間なのだと思い込みたかったのかもしれません。
陣治という人物
陣治はこの作品中で唯一、心を感じさせてくれる人物でした。
もちろん、下品で野卑な姿は嫌悪感を誘いますが、十和子への想いは一貫していました。
過去の栄光にすがる姿や、うだつのあがらない様子を描かれてイライラしますが、でも、よく考えれば、彼はずっと「普通の冴えないおじさん」でした。
他の登場人物たちの冷徹だったり、身勝手だったりする破綻具合に照らせば、陣治はただの不器用な男でしかありません。
しかも、就職や社内試験に向けて猛勉強に励み、無事合格するなど、実は努力家な一面もあります。
なにより、めちゃくちゃになじられても、納得できない職場に転職して愚痴を言いながらでも、投げ出さずに十和子を側に置き養い続けていました。
読み進めるにつれて、陣治に対する不快感は徐々になくなっていきました。
十和子や水島のことを付けまわすようになっても、私はもう彼のことを不快には思わなくなっていました。
陣治は、確かに十和子を愛しているのだなと感じられたからです。
彼にとって、十和子への恋心だけが、人生になっていたのだと思います。
陣治は十和子を救ったか
陣治はずっと、十和子を暗い過去や犯した罪から守ろうとし続けました。
十和子のために全てを隠して、「普通」の生活を続けようとがんばり続けていました。
しかし、最後の最後で陣治は、十和子の目の前で自殺します。
「幸せになって俺の生まれ変わりを産め」と十和子が幸せに生きることを願いながら死んでいきます。
でももし、本当に十和子の幸せを願うなら、彼は生き続けるべきだったんじゃないかと思います。
十和子にとって、陣治こそが、一緒に生きるべき相手だったはずです。
彼が最後になにを思って死を選んだのか。
それが私にはわかりませんでした。
陣治は確かに十和子を救っていたと思います。
彼の存在自体が、十和子の救いになり始めていたと思うのです。
しかし、彼がいなくなってしまって、その後の十和子はどうしたのだろうと考えずにはいられません。
なぜだか幸せになるビジョンはあまり浮かばず、また黒崎や水島のような男と同じようなことを繰り返したり、もしくは命を絶ってしまったのではないかと思えて仕方ないのです。
沼田さんはこのラストのあとを、どのように思い描いて書かれたのでしょうか。
陣治の最後の願いが叶っていると良いなと思います。
それぞれの人物の思惑がうまく絡まりあい、先が気になってどんどん読み進めてしまう作品でした。
映画版、蒼井優さんの十和子、阿部サダヲさんの陣治がどう仕上がっているのか、とても気になっているので、ぜひ見に行きたいです!
また、沼田さんの他の作品も読んでみたいと思います。