アラサーニートの雑記帖

アラサーニートが感じたことや日々の出来事などを綴る雑記ブログです。

【映画】『心が叫びたがってるんだ。』(アニメ版)を見ました

昨日、フジテレビの土曜プレミアムでアニメ映画の『心が叫びたがってるんだ。』が放送されました。

結構見た方も多いのではないでしょうか。

テレビで見るとなんか家族や恋人とワイワイ言いながら見れるので、映画館とはまた違った感じで楽しいですよね。

ちょっと気になっていた作品だったので、私も夕ご飯を食べながら見ました。

そんなわけで、『心が叫びたがってるんだ。』のレビュー記事です。

 

心が叫びたがってるんだ。[アニメ版](2015年 / 日本)

フジテレビ系列で放送された人気アニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のメインスタッフが再集結して製作された長編アニメ映画。

とある事情で喋ることが出来ない少女・成瀬順を中心に、「地域ふれあい交流会」でのミュージカル上演を目指す高校生たちの青春群像劇。

2017年7月22日に、同名の実写映画も公開されたばかりの人気作品です。

 

あらすじ

小学生だった成瀬順は、自身の意図しない失言がきっかけで両親が離婚してしまい、それから喋ることができなくなってしまう。そのまま高校生となった順は、携帯のメールだけで意思疎通をはかり、周囲からは「変な子」として扱われていた。そんなある日、順はクラスメイトの坂上拓実・仁藤菜月・田崎大樹と共に、担任から「地域ふれあい交流会」という学校行事の実行委員に指名される。紆余曲折ありながらも、出し物はオリジナルのミュージカルに決定し、4人を中心に上演に向けての準備が進められ、順も次第に変わり始めるが・・・。

 

感想

まず、ラストのミュージカルシーンが、歌・演出等とても良かったと思います。

楽曲に関しては、過去の名曲にオリジナルの歌詞をつけて使用するという方法をとっているため、ミュージカル好き・音楽好きには特に楽しめます。

順と仁藤の声優さんの歌声が素晴らしく、もっと歌を聴きたいなと思いました。

ただ、ストーリーの方は、ちょっと雑だったかなという印象です。

群像劇を謳っている割に、順以外の人の描写があっさりしすぎているし、なかなか誰にも感情移入し辛く、あまり入り込めなかったなというのが正直なところです。

クラス一丸となってミュージカルの成功を目指す中盤あたりは、青春映画として見ていて楽しめました。

 

※ここから先はストーリーのネタバレを含みます!未鑑賞の方はご注意ください。

 

音楽シーンが素敵

前段でも書きましたが、音楽シーンは本当にとても良かったです。

私が特に好きだったのは、ミュージカルで使われた最初の2曲。

2曲目は『サマータイム』だとすぐにわかったのですが、1曲目は知らない曲で、調べてみたら『スワニー』という曲だそうです。

どちらもガーシュインの曲でした。

この2曲はミュージカルの様子も一部映像で流れるのですが、舞台演出にも心惹かれるものがありました。

正直、高校生の素人たちがここまでできるのか、という気持ちになりました(笑)

また公演から逃げ出した順が戻ってきた時に歌う『グリーンスリーブス』も良かったです。

ただ、準備段階では素敵な曲に仕上がっていたベートーヴェンの『悲愴』を用いた楽曲が、ラストで『Over the Rainbow』とかけ合わせの楽曲になっており、どちらも元は綺麗な曲なのに、メロディーラインも歌詞も聞き取り辛く、ラストのラストでちょっとイマイチだったのが残念でした。

あそこはどちらか1本でまとめた方が多分綺麗だったのではないかと素人ながら思いました。

それでも、全体的に音楽シーンは素敵で、準備中のピアノ演奏や仮歌など、ちょっとした部分にも気を配られていて良かったです。

 

高校生らしい青春

「地域ふれあい交流会」という行事のために、担任の思惑もあってミュージカルを上演することになるものの、始めは多くのクラスメイトがその難易度の高さやいかにも面倒そうな内容に反対の色を示します。

しかし、喋れなかった順が歌でやりたいという気持ちを強く示したことや、他の3人の実行委員たちの熱意が伝わったことで、クラスはまとまっていきます。

それぞれが得意なことを全力でやり、助け合いながら1つのものを作り上げていく様子は、自分の高校の文化祭などを思い出させてくれて、素直にあー青春だな。いいな。と思って微笑ましく見ることができました。

映画的に途中でまた何か問題が起きるかなとも思っていたのですが、特にそういうこともなく、当日までは、ただただ一生懸命な皆の姿を応援する気持ちで見ていました。

クラス全体が基本的に「優しい世界」として描かれていたのが印象的でした。

 

人物描写の薄さとラストの失速感

前述の通り、皆のがんばりが素晴らしく、そこに感情移入していただけに、当日になって、順が坂上に失恋したという理由だけでボイコットをはかったのにはなんだかイライラしてしまいました。

その後、坂上に対して暴言を吐きまくり、なんかいい感じのことを言われて二人で会場に戻るシーンも、なんというか、もったいない展開だなと感じました。

それまで、順は自分のトラウマを抱えながら、母親に辛く当たられながらもがんばってきていて、クラスメイト達もそれに呼応するように本番に向けて精一杯やってきていました。

それを失恋だけで、(しかも偶然知ってしまっただけで、坂上がひどいことをしたわけでもないのに、)あんな風に全てを放り出し、それでもまだ手を差し伸べようとしてくれた坂上に向かって悪口としか言いようのない言葉を投げつけるなんて、それだけで、順への共感や応援していた気持ちは一気に萎んでしまいました。

さらに、坂上だけでなく、坂上が思いを寄せる仁藤に対してまでいわれのない悪口を言いまくり、喋れなかった間の気持ちの爆発をあのような形で描いたのかもしれませんが、普通に喋れる人たちだって言えない・言わないことはあるし、なんだか順が一人だけすごく子供に見えてしまって、正直萎えました。

坂上の方も、そんな彼女の罵詈雑言を受けたくせに、なぜかありがとうみたいな感じで、展開自体にもちょっと冷めてしまいました。

そこから順を連れ戻し、彼女が歌いながら入場するシーンは順の母親との気持ちの邂逅みたいな部分もあり良かったのですが、当日に逃げ出した順に対するクラスメイト達の菩薩のような優しさや、この映画で恐らく一番イイ男だった野球部の田崎が順に告白するという展開は、前のシーンで冷めていたこともありご都合主義すぎるなと感じました。

全体に順以外の登場人物の描写があまりなかったこともあり、順への応援の気持ちがなくなってしまったあと、誰ひとりとして心の動きが読めず、結局モヤモヤ感だけが残って終わってしまったのが残念でした。

 

 

全体として、ストーリーと人物描写はちょっとイマイチだったかなと感じました。

ただ、青春の雰囲気を感じさせるシーンや、音楽・ミュージカルシーンは良かったです。

ミュージカルシーンだけのスピンオフみたいなのがあれば見てみたいかな、と思いました。