アラサーニートの雑記帖

アラサーニートが感じたことや日々の出来事などを綴る雑記ブログです。

【映画】『ウォールフラワー』を見ました

先日久々にTSUTAYAでDVDを借りてきました。

最近はHuluやNetflixなど、レンタル店に行かなくても映画やドラマを見られるようになったため、ここ2年ほどレンタル店には行っていなかったのですが、久々に行くと、やはり実際にものが並んでいるというのは、偶然の出会いがあって楽しいですね。

今回そんな偶然の出会いで見つけたのは『ウォールフラワー』という映画。

鮮やかな黄緑をバックにしたシンプルなジャケットと、地味なあらすじ(邦画によくある淡々とした日常ものとかが好きなので)、あとはエマ・ワトソンが出ている、ということで興味をそそられて借りてみました。

 

ウォールフラワー(2012年 / アメリカ)

スティーブン・チョボスキーによる小説『ウォールフラワー』を映画化。著者自身が脚本・監督を務めています。

心に傷を負った主人公が、少し変わった友人たちと過ごす青春時代を描いた作品で、原作小説は、アメリカ図書館協会が選ぶ「2009年最も推奨する本」トップ10で第三位を獲得しています。

ウォールフラワー スペシャル・プライス [DVD]

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あらすじ

高校1年生のチャーリーは、始まったばかりの高校生活を不安と退屈を持て余して過ごしていた。高校入学直前に親友が自殺してしまったことで、心に傷を負い、たまに幻覚を見てしまうこともチャーリーを不安にさせていた。このままウォールフラワー(壁の花)として退屈な高校生活を過ごすのかと不安に思っていたある日、美しい女の子サムとその義兄パトリックと知り合う。二人との出会いで、チャーリーは壁際から歩み出していく。

 

感想

主人公のチャーリー、恋の相手サム、その兄パトリックなど、主要な登場人物たちがみんな優しく、それぞれに悩みを抱えながらも、お互いを受け入れ、支えあおうとする姿が見ていてとても応援したくなる映画でした。

ただ、チャーリーが幻覚をみてしまう原因やトラウマに関して、かなりぼかしてあるため、そのあたりの理解が難しく、物語として見たときに私は少しモヤモヤしてしまいました。

 

※ここから先はストーリーのネタバレを含みます!未鑑賞の方はご注意ください。

  

主人公たちの魅力

この作品は、主人公たち人物の優しさが大きな魅力になっています。

主人公のチャーリーはナイーブでシャイながらも、恋人に暴力を振るわれた姉に駆け寄ろうとし、二股をするような男と付き合い続けるサムを見て、「どうしてあんな人を選ぶの」と思いながらも、サムが幸せになるならと身を引こうとします。

サムとパトリックの兄妹は、いきなり現れたチャーリーを快く(本当になんのためらいもなく)受け入れ、仲間たちに引き合わせ、チャーリーの親友が自殺していたと知ると、傷を広げないように、前に進めるように、チャーリーの気持ちを盛り上げ、受け入れる気持ちを伝えていきます。

また、チャーリーの家族も、皆がトラウマを抱えたチャーリーを気遣い、暖かい雰囲気に満ちています。

もちろん、仲違いをすることもありますが、基本的にお互いがお互いを思いやっている人たちの物語なので、安心してその空気を楽しむことができました。

 

アンダーソン先生

この作品は基本的に、高校生たちがお互いの傷を認め、時に助け合ったりして進んでいく物語ですが、大人として主人公チャーリーに大きな影響を与えた人物がいます。

国語教師で劇作家のアンダーソン先生です。

授業中発表をしなかったチャーリーがノートに答えを書いているのを見つけて、授業後に声をかけます。

それから、チャーリーが文学に興味を持っていることを知り、私物の本を貸して、個人的に感想文の添削をするなど、チャーリーの興味と才能を伸ばすよう尽力してくれます。

高校生活に入ったばかりで、不安を抱えた中、アンダーソン先生のような存在に出会えたことは、チャーリーはかなり幸運だったと言えると思います。

両親以外の大人が、自分のことをよく知って、味方になってくれることは、子供の現在や未来をよくすることだと思います。

チャーリーはアンダーソン先生のおかげで、自分自身の進みたい道を見つけ、切り拓いていくことができました。

フワフワ、キラキラした時間が多く描かれる本作品の中で、また違った魅力を持つ関係性が描かれていたなと感じました。

 

恋愛や恋人関係、誰かを好きになること

この作品中には、いくつかの恋愛や恋人同士としての関係が描かれています。

チャーリーとサム、チャーリーとチャーリーの初めての恋人メアリー・エリザベス、サムとその恋人、パトリックと同性の恋人、チャーリーの姉とその恋人。

様々なカップルが登場しますが、最終的に作品の最後に付き合っていたのは、ラストの方で成就したチャーリーとサムだけでした。

この作品のひとつのテーマとして、DVや浮気などで恋人に苦しめられる女性というものがあるのではないかと感じました。

主人公のチャーリーから見て、恋人に苦しめられる人たちは、その人自身の魅力よりも低い、その人に見合わない人と付き合っているように見えているのですが、チャーリーが「見合わない人と付き合っているな」と感じるのは、チャーリーが好きな人たちばかりです。特にサムに関しては、チャーリーのサムへの想いが、サムの実像や、サム自身の気持ちを見誤ったり、軽視してしまうような形になってしまっているように感じました。

誰かを好きになるとき、その気持ちはなかなかコントロールできるものではないですし、その気持ち故に好きな人のことが見えなくなってしまうこともあります。

ただ、相手のことを本気で考えたり、優しく思えるようにもなります。

そういう誰かを好きになることの、身勝手さや、どうにもならなさや、優しさやそういったものがよく描かれていたのかなと思います。

 

チャーリーの抱えているものの実態は?

最後に、少しモヤモヤしたところを書いておきます。チャーリーのトラウマに関してです。

チャーリーにはトラウマが大きく2つあるようです。

1つは中学までの親友の自殺。もう1つは叔母による性的虐待(恐らく)とその叔母の死です。

チャーリーは親友の自殺によって精神的な病気を患い、幻覚を見るようになった、という理解で見ていたのですが、途中から叔母さんの話が出てきて、他にも原因があるというようなことを匂わせる演出になります。

性的なことをされていたのだろう、というのはわかるのですが、具体的な描写は避けられ、しかも、ほとんどがチャーリーの幻覚の形でかなり断片的に見せられるようになるため、全体像がかなりぼやけた印象があります。

また、叔母さん自身が男性にDVを受けていたというような描写もあり、そのあたりはチャーリーの女性に対する意識の根底に影響を与えているのだろうと感じました。

叔母さんに関しては、性的虐待を受けていたために、無意識に嫌悪感を抱いていたところ、偶然叔母さんが交通事故でなくなったため、自分が殺したという意識を持ち、叔母さんに関する一連の記憶を封印してしまった。それが、精神的に辛くなると幻覚のように発露してくる、という状態だろうなとは思うのですが、ただ、正直この映画の中では、叔母さんの件は「トラウマを抱えて幻覚を見る」という以上の意味はないように感じました。

逆に親友の死は言葉として何度か出ているだけで、この叔母さんのエピソードに対するミスリードとして使われただけだったのかな、という感じだったので、精神的なトラウマ、傷、というようなテーマを作るのであれば、どちらか一方のエピソードだけを、もう少し掘り下げても良かったのかなとも思いました。

ただ、幼少期に抱えたなにか、親友の死、そして高校での現実の人間関係や生活、といった複合的なものを見せたかったのかもしれないですね。

 

 

ティーンエイジャーの孤独や不安、仲間がいればなんでもできそうな特別感・万能感、恋愛のごちゃごちゃした感情など、高校生活のキラキラやモヤモヤを感じられる作品でした。

サム役のエマ・ワトソンが可愛く、兄パトリックの妖しい魅力が素敵でした!

そのうち原作も読んでみたいと思います!