『ベルギー奇想の系譜 ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで』を見てきました
まず、お盆の帰省中ですら意地で更新を続けていたのですが、今回サボり癖が出てしまい2日程お休みしてしまいました・・・。
テーマが決まらなかったり、決まっても書き出せなかったり、なんだかスランプ的な状態でした。
しかし、このまま何日もお休みしているとほんとに書かなくなってしまうので、有給もらったと思ってまた復活します。
さて、今回はそんな有給の間に面白い展覧会に行ってきましたので、その紹介をします。
実は今東京に滞在中で、東京・渋谷のBunkamuraで開催中の展覧会です!
ベルギー奇想の系譜 ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで
今回行ってきたのは、『ベルギー奇想の系譜展』です。
東京展の開催概要は下記の通り。
- 開催期間:2017年7月15日(土)~9月24日(日)
- 場所:Bunkamura ザ・ミュージアム
- 時間:10:00~18:00(金・土は21:00まで)※入場は閉館30分前まで
- 料金:一般1500円、高大生1000円、小中生700円
ベルギーの写実的でありながら幻想的で奇妙な世界を持つ美術作品を紹介する展覧会ですが、ポスターの独特の絵の雰囲気に興味をひかれたのと、マグリットは教科書で見たときに結構好きだったな、というくらいの動機で、ベルギー美術の知識はほとんどない状態で向かいました。
結構なボリュームの展示で、じっくり2時間ほどかけて見てまわりました。
結論から言うと、すっごく楽しかった!
展覧会は3章構成になっていたので、それに合わせて、印象に残っている作品などをまじえつつ、もう少し詳しく紹介していきます!
第1章:15-17世紀のフランドル美術
いきなり展覧会のメインとも言える、不思議ワールド全開な作品たちが並びます。
ボスやブリューゲルといった「奇想」のルーツとも言える人々の作品が集められていました。(私が今回の展覧会で名前を知っていたのはマグリットとルーベンスだけだったので、気になる方は調べてみてください。)
意味は全くわからないのですが、細かく描き込まれた奇妙な世界は、なんだかクセになる面白さがありました。
じっくり見入る人も多く、この第1章が一番人の進みが遅かったように思います。
トゥヌグダルスの幻視(ヒエロニムス・ボス工房 / 1490-1500年頃)
展覧会のメインビジュアルにもなっているこの作品。
1作目で早速見せてくれる気前の良さです。
左下のオレンジの衣装の男性がトゥヌグダルスで、彼が眠っている間に巡っている地獄の様子を描いているそう。
人間たちがリアルなので恐ろしい感じもしますが、悪魔?モンスター?たちはよく見ると可愛かったり、シュールな世界観です。
『七つの大罪』シリーズ(ピーテル・ブリューゲル(父) / 1558年頃)
『七つの大罪』シリーズより「傲慢」
憤怒・怠惰・傲慢・貪欲・大食・嫉妬・邪淫の7つの作品からなるシリーズ。
上の絵は「傲慢」を表すものですが、他の6つもそれぞれにブリューゲルのイメージする形で罪が描かれています。
「傲慢」では象徴する動物として孔雀が描かれ、また鏡を見る人間やモンスターの姿も目立ちます。
シリーズで見るとより面白かったです。
ブリューゲルの作品については会場が絵の一部が動くような動画が流れていたのですが、かなり凝った作りになっていて、不思議とずっと見ていたくなるような魅力がありました。
第2章:19世紀末から20世紀初頭のベルギー象徴派・表現主義
第1章のボスやブリューゲルの作品がどこか動画的な動きを感じさせるものが多かったのに対し、第2章は全体的に静かでありながら華やかな、絵画らしい雰囲気の作品が多かったように思います。
主にロップスやクノップスなどの作品が取り上げられており、静謐な画面から、強い主張を感じさせる印象でした。
この章は私は全く知らない画家たちばかりだったのですが、ロップスはどこかミュシャを感じさせるような演劇的な雰囲気を感じさせる作風で、強い主張を込めながらも、多くの人に愛されるであろう作品ばかりでした。
聖アントニウスの誘惑(フェリシアン・ロップス / 1878年)
キリストを押しのけて十字架に磔になる美しい裸婦。
女性の恍惚とした表情や、悪魔のニヤニヤ笑い、骸骨のキューピッド達が可愛らしいですが、誘惑を受けるアントニウスは必死に耐えているようです。
なんだかコミカルささえ感じさせる1枚で、現代的に感じられます。
ところで、この展覧会だけでも「聖アントニウスの誘惑」というタイトルの作品を3つか4つくらい見ました。めっちゃ耐えてて大変ですね、アントニウスさん。がんばれ。
フランドルの雪(ヴァレリウス・ド・サードレール / 1928年)
今回最も心惹かれた作品かもしれません。
実物はかなり大きくて、真っ白な雪景色と空の深い蒼、そして静かに光を広げる太陽の色合いが本当に美しくて見入ってしまいました。
この展覧会の中ではある意味異質な「普通の」絵画なのですが、静謐な空気感にはっとさせられます。
夢や幻想や思想の世界が広がる展覧会の中で、どういった意図でこの絵があの場にかけられていたのか汲み取れなかった自分の知識のなさがちょっと残念です。(もしかしたら展示の解説に書かれていたかも知れないですね・・・。)
第3章:20世紀のシュルレアリスムから現代まで
最終章となる第3章でいよいよマグリットの登場です。
有名な『大家族』を生で見ることができました。
他にはデルヴォーの描く女性たちに軽い恐怖を覚えたり、絵画だけでなく、オブジェや音声を用いた作品などの現代芸術にも触れることができました。
立体物では『生き残るには脳が足らない』(トマス・ルルイ / 2009年)という巨大な頭を持つ人の像が印象深かったです。身体は小さくて、支えきれずに頭ぐにゃんってなって地面についてます。あんなに頭でっかちなのにまだ「脳が足らない」ってタイトルもなんだか面白い。恐らく『進○の巨人』を知っている人はみんなそれを連想しそうな感じでした(笑)
大家族(ルネ・マグリット / 1963年)
曇り空に青空の鳥が大きくはばたく、マグリットの中でも有名な作品。
教科書などで見たときは現代的なデザインでコンピューターで描かれたもののように見えていましたが、実物を見ると筆のあとが感じられて、(当たり前ですが)手で描かれていることが実感できて面白かったです。
実際に見てみると、曇り空と青空の対比が、印刷で見るよりもより強く感じられ、またその作品の大きさに、より強く鳥のはばたきを感じられました。
海は近い(ポール・デルヴォー / 1965年)
月明かりに照らされる石畳の街並みの奥に海が見えます。佇んだり、ベッドに横になる裸の女。海を目指して歩く着衣の女。古い街並みのようなのに真ん中には電柱がのびています。
言葉だけでは形容し辛い絵なのですが、静謐で美しくも、どこか恐ろしいような空気をはらんだ作品でした。
裸だったり着衣だったり、立ってたり寝てたり表情も様々で、それぞれの女たちの繋がりを見出せず、古いのか新しいのかわからない街もなんだか不安を煽ります。
独特な魅力のある絵だと感じました。
全体の感想
久々に展覧会に行きましたが、とにかく楽しかったです。
途中で休憩もせずに、2時間たっぷりじっくり美術の世界を堪能しました。
展示の数も多く、それぞれの章で全く違ったテイストの世界観を味わえますし、新しい魅力的な作家さんたちに出会えて、ベルギー芸術への関心が高まりました。
気になった作家さんたちについて、これからちょっと調べて他の作品も見てみようと思います!
一点だけ、会場内は作品保護のために結構低温に保たれていますので、上着を持って行かれることをオススメします!(会場内でブランケットの無料貸出もやっていました)
詳細は最初にリンクした展覧会公式HPの他にBunkamuraの方のHPも充実していて面白いので、興味のある方はこちらも見てみると良さそうです。
生の芸術作品にはやはり力があるな、と今回改めて感じました。
微妙な色合いや絵の具の盛り上がり、細々とした描き込みなど、じっくり見るとやはり楽しいですし、ネットや印刷物では伝わらない魅力を感じられました。
『ベルギー奇想の系譜展』は東京では9月24日(日)まで、まだ1ヶ月ほどありますので、興味を持たれた方はぜひ行ってみてください!