アラサーニートの雑記帖

アラサーニートが感じたことや日々の出来事などを綴る雑記ブログです。

【アニメ】『クズの本懐』を見ました

ちょっと前に本屋さんで気になっていた漫画があって、それが『クズの本懐』という漫画でした。

表紙の絵が綺麗だったのと、販促用の1話だけ読める小冊子を立ち読みしたところ続きが気になる展開だったので、それ以来ずっと気になっていました。

しかし、結局その漫画は購入することなくいたのですが、先日アニメ版をAmazonプライムで発見しました。

これは見るしかない!ということで全話視聴完了したので、レビューを書いていきたいと思います。

 

クズの本懐(2017年 / 全12話)

横槍メンゴさんの同名漫画のアニメ化作品。

フジテレビの深夜アニメ放送枠「ノイタミナ」にて全12話が放送されました。

絶対に叶わない片思いの代替として嘘の恋人関係を結んだ花火と麦を中心に、恋愛や友情、自分の価値など登場人物の心情を深く描いています。

同時期にテレビドラマも放送され、原作・アニメ・ドラマの全てが同時期に完結する珍しいメディア展開を見せた作品です。

 

あらすじ

高校生の安楽岡花火は、幼い頃から交流があり、今は花火の高校で国語教師をしている鐘井鳴海にずっと恋をしている。

しかし、最近花火は鳴海が別の人に恋をしてしまったことに気付いた。鳴海の恋の相手は同じ高校の音楽教師である皆川茜だ。

茜は美人で清楚な雰囲気を持ち、生徒たちからの人気も高い。

茜に敵対心を抱く花火だが、そんな茜に恋する視線を向けている人物に気付く。視線の主は同学年の粟屋麦だった。

互いの叶わないであろう恋心を打ち明けあい、距離が縮まる二人。

ある日、お互いの寂しさを触れ合うことで埋められることに気付いた二人は、互いを嘘の恋人同士とする契約を結ぶ。

 

感想

一言で言うと、とても面白かったです。

まず、絵柄が可愛くて綺麗なのと、声優さんたちの演技が素晴らしくて、自然と見入ってしまいました。

はじめ青春っぽく見せつつも、実は気持ちの奥のドロドロまで見せ尽くそうとするストーリーと演出がどんどん先を見たい気持ちにさせます。

そして、なんと言ってもそれぞれのキャラクターの描写が素晴らしかったです。

主要人物たちそれぞれがどこかに冷静さを飼っていて、それを存分にさらけ出してくれるので、見ていてあーわかる、あーわかる、と自分の心にも刺さってくるものがあります。ただ一人、鳴海だけは本当にピュアピュアした人物のように描かれていました。

なかなか救われない関係ばかりでヤキモキしたり、こいつはまたこんなことして、とキャラクターに嫌悪感を抱いたりもするのですが、最終話を見た後は、なんか皆好きだわってなれたので、良い作品だったと思います。

 

※ここからは作品の核心部分、ネタバレを含みます。ご注意ください。

 

瞳の宇宙に魅了される

キャラクターたちがみんな可愛くて、映像全体としても書店で見た原作漫画の雰囲気にかなり寄せられている印象でした。

特にヒロインの花火ちゃんは声の雰囲気なども好きで、めっちゃ可愛かったです。

普段アニメなどの作画はそんなに気にしないのですが、この作品では瞳の色がとても綺麗だなと思って、キャラの顔がアップになる時は結構じっと見ていました。

複数の色が乗せてあって、深みがあって、なんか宇宙みたいな感じなんですよね。

調べてみると、原作漫画のカラー絵も瞳の複雑な色合いが素敵なので、原作リスペクトが効いた作品だなと思いました。

女性キャラクターはタイプの異なる美女たち、男性キャラクターは基本的に綺麗系の塩顔イケメンたちといった印象で、私の好みにハマっていたので眼福な作品でした。

 

花火と麦の関係

片思いの代替に嘘の恋人関係を結ぶ二人ですが、見ていると、YOU達そのまま付き合っちゃいなよ!って思える感じでお似合いです。

美男美女ですし、お互いに居心地が良いのだろうとわかるからです。

二人はお互いが似たもの同士だと思っているように感じますが、実際は花火の方が麦より純粋だったように見えました。

麦は中学時代から先輩と割り切った関係を持っちゃうような男で、ずっと自分に好意をぶつけてくれているモカという存在もいます。

女性関係自体には免疫があり、場の空気をある程度コントロールする方法だって知っています。

対して花火は、処女でひたすらお兄ちゃん(鳴海)に片思いをし続けて、告白されることはたくさんあっても、相手の気持ちを鑑みることもありませんでした。

冷静な思考の持ち主ですが、気持ちの揺れに弱いです。

そんな二人の契約は結局ずっと花火の方が依存が強いままだったのかなと感じました。

もともと身体を使って寂しさを埋めあう契約なのですから、麦はその気になれば他の女性を選択肢にすることができるという心の余裕があったように見えました。(実際中学時代の先輩やモカとも色々あったりする。)

花火はずっとお兄ちゃんだけが全てで、しかもそのお兄ちゃんが振り向いてくれる確率はほぼゼロで、そうすると、そこで頼りは麦だけになってしまいます。

結局花火は、麦に対して恋愛感情のようなものを抱き始めていたように感じました。しかし、麦は花火に対して強い親しみや友情、執着は感じていたとしても、恋愛感情までは抱かなかったのではないでしょうか。

対等のようで実は対等じゃない二人の間の微妙な温度差が、物語のスパイスになっているように思います。

 

それぞれの成長と変化

花火や麦、そして茜といった中心人物だけでなく、花火の親友えっちゃん、そして麦を追いかけるモカなどのサブキャラクター達も合わせて、物語中で心情をしっかり描いてくれているので、それぞれの人物がそれぞれの出来事を経て、どんな風に変化していくのかを割と細かに見ることができます。

そういう意味ではとても親切な作りの作品と言えます。

ただ、ラストにかけて、麦の描写(出番自体も心情描写も)がどんどん少なくなっていくので、麦と花火の決断で、麦が新しく歩み出そうとし始めていることはわかるのですが、心境が吐露されていたそれまでと違って、視聴者はその心情や変化を想像するしかない状態になっています。

恐らく製作者の意図的な演出で、そのこと自体に意味があると思うのですが、うまく掴み切れていない感じがします。花火と麦の心の繋がっていたある一部の回路が切れた、二人が互いに依存したりするのではなく、個々に歩みだした、ということの強調なのでしょうか。

 

鳴海(お兄ちゃん)の特殊性

前段で心情描写が細かく、親切な作りの作品と述べましたが、一人だけ例外がいました。

花火の思い人である鳴海(お兄ちゃん)です。

彼はひたすらに優しく良い人で、彼だけは作中で特に大きな心情の変化が描かれませんでした。

思いを寄せる茜にまっすぐに気持ちをぶつけ、彼女が男好きの性悪女だと知ってもその気持ちは揺らがず、それどころか、男遊びを辞める必要はないとまで言い切ります。

恋は盲目なのか、はたまた何か考えてのことなのか。

そもそも茜を好きになったきっかけは、茜に亡くなった母親の面影を見たから、ということのようなのですが、それ以上の説明はなく、あとはひたすらに茜が好きだという描写があるばかりです。

そもそも、母に似ているという以外にどういった部分で鳴海が茜を好きなのかがわからないので、本性を知ってなお好きだと言い続ける鳴海の心情を理解するのは相当に難しい気がします。

あれだけいろんな人物が心の中を曝け出しまくる中で、全くと言っていいほど触れられなかった鳴海の心の奥と、作者の意図が気になってしまいます。

単に脇役というだけなのだろうか・・・。

 

茜さんというファム・ファタールのための物語

この作品の主人公は花火と麦の二人なのですが、実際には全ては茜を中心に回っていたように感じます。

茜さん、クソビ○チなんですよ。本人が作中でそう言っちゃうくらい。

途中までは、なんだこの女って思ってイライラさせられっぱなしなんですけど、最後の方はなんか可愛く見えてきちゃって、やっぱり魔性の女すごいってなりました。

しかも結局彼女は空っぽだった自分を変えてくれそうな人と、ちゃっかり幸せになる。(先のことはわかりませんが。)茜さんの一人勝ちですよ。

でもよくよく考えてみると、茜が一番ずっと自分の気持ちに正直だったし、結局そういう方が幸せになれるのかもしれないな、と思ったりします。

意識せずに男性にフラフラ依存してしまうタイプではなく、自分はこうなんだ、こうしたいからやっていると思って行動しているタイプで、性格はそりゃめちゃくちゃ悪いんですけど、一貫しているところは作中で一番潔くてカッコ良かったなと感じます。そういうところが憎み切れないというか。

結局、茜さん結構好きかも。ってなってしまったので、最終的に魔性の女の虜になってしまった感じがします(笑)

 

 

面白い作品だったので、いつの間にか結構長く書いてしまっていました。

気になった方はぜひ見てみて、茜さんの魔の手に堕ちるといいと思います(笑)

あ、多少大人な描写の多い作品ですので、苦手な方はご注意ください。

漫画とドラマもあるので、そちらもチェックしてみようと思います!