アラサーニートの雑記帖

アラサーニートが感じたことや日々の出来事などを綴る雑記ブログです。

【映画】『イヴの総て』を見ました

昨日は久々に映画館で映画を見てきました。

はじめは今話題の『美女と野獣』か『メッセージ』でも見に行こうか、と考えていたのですが、前日に上映作品を調べていたところ、白黒映画を発見しました。

ご存知の方も多いかと思いますが、『午前十時の映画祭』という過去の名作を上映するもので、今回は『イヴの総て』という作品が上映されるとのことでした。

あらすじやレビューを見てみると、「悪女」「演劇界の裏側」など魅力的なワードが並んでいたため鑑賞することに決めました。

 

【最初だけどおまけ】『午前十時の映画祭』について

映画の話に入る前に、今回行ってみてよかったので、『午前十時の映画祭』について調べてみました。

毎日朝10時から、全国色々な映画館で、往年の名作を上映しています。

1作品につき1週間、もしくは2週間の上映。

イヴの総て』もまだやっていますので、興味のある方はぜひ見にいってくださいね!

上映館や上映作品等の情報は下記の公式HPをご参照ください。

午前十時の映画祭8 デジタルで甦る永遠の名作

 

イヴの総て(1950年 / アメリカ)

実在の女優エリザベート・ベルクナーを題材とした、メアリー・オアの『The Wisdom of Eve』という小説を原作とした映画です。

第23回アカデミー賞で作品賞はじめ6部門で受賞。

売れる前のマリリン・モンローがカズウェルという女優の卵役で出演していることでも有名。(知らずに見ていましたが、カズウェルとっても可愛いです!)

あらすじ

売れっ子脚本家を夫に持つカレンは、夫のロイドが脚本を手掛け、親友である大女優マーゴ・チャニングが主演する舞台を毎日見続ける若い女性がいることに気がつき、ある日声をかける。彼女はイヴ・ハリントン。マーゴの大ファンだというイヴの素直で謙虚な態度にも好感を持ったカレンは、イヴをマーゴに紹介することに。

楽屋で、憧れの大女優マーゴに加え、カレンの夫ロイド、マーゴの恋人で演出家のビルなど、演劇界の大物たちに紹介されたイヴは、その場でも持ち前の素直さや賢さを発揮し、さらに不幸な身の上話にマーゴが同情したこともあり、そのままマーゴの付き人として雇われることになる。

献身的な働きを見せるイヴを、マーゴも妹のように可愛がるが、イヴは次第にその野心の牙を剥き、マーゴの周りには暗雲が立ち込め始める・・・。

 

すごく簡単な感想

激しくも実は可愛らしいマーゴと、静かに野心を燃やすイヴの対比がよく描かれていましたし、とにかく人物それぞれの描写が細かく、心情の動きを追うのが楽しい映画でした。

ウィットに富んだ会話や、ふふっと笑えるようなシーンも多く、重くなりすぎずに見ることができました。

また、私は白黒映画というものをあんまり見たことがなくて(『ローマの休日』くらいでしょうか・・・)、最初こそ少し違和感があったのですが、見ているうちに全く気にならなくなり、それどころか、いつの間にか色彩が浮かんでくるような感覚が新しくて、それも面白かったです。

 

詳細な感想や気になったところ

ここから詳細に書きます!

ネタバレもありますので、未見の方で知りたくない方は読み飛ばしてください!

 

・結果的にはハッピーエンド?

このお話では最終的に、イヴはスター女優への道を歩み、マーゴは恋人ビルと結婚し、カレンとロイドも離婚を免れ仲の良い夫婦を(実際はわかりませんが)続けています。

イヴがスター女優となったところで、大女優マーゴの地位は揺るぎないようですし、そもそもマーゴ自身は望んでいた女性としての幸せを手に入れたようです。

イヴの画策によって壊れるかに思われたマーゴとカレンの友情も、変わらず続いています。

この結末だけを見ると、いろいろゴタゴタしたけれど、それぞれそんなに不幸になってないのかなという印象でした。

 

・一番不幸になったのは実はカレンなのでは

上記のように、それぞれなんとなく良い感じの結末に落ち着いたのかなと思うのですが、唯一カレンだけは不幸になってしまったのかなと感じました。

カレンは、マーゴやイヴと違い、自分が表舞台に立つ、働く女性ではありません。

カレン自身の台詞でもありますが(うろ覚えなのでちょっと違うかも・・・)、「夫を愛するだけ」の存在である彼女には、この作品の他の女性たちのように他に寄る辺がないのです。

それなのに、売れっ子脚本家であるが故に夫のロイドはイヴに狙われ、まんまとイヴに好意を寄せていきます。この時のカレンの心情は映画内でも語られていますが、相当辛いものがあっただろうなと思います。

しかも元を正せば、元凶であるイヴを皆に紹介したのは他でもない自分自身だし、イヴを大きな舞台に立たせるきっかけを作ったのも自分自身です(しかもマーゴへの喧嘩の腹いせとして)。

夫婦仲は表向き壊れていなかったようですが(ラストの授賞式でロイドは脚本賞のようなものを受賞しており、カレンに「内助の功でとった賞だ」というようなことをささやきます)、実際にどのような状態にあったんだろうな・・・とちょっと気になってしまいます。

 

・イヴは皆に愛される道もあったのかも

 もしもイヴが本当に素直な人であれば、皆に愛されたままで、全く同じような結末になったかもしれないな、なんて思ってしまったりもします。

なぜなら、もともとイヴは皆に好かれていて、策略などなくても、カレンのような、マーゴのような人たちから、仕事をもらったり、融通を利かせてもらったりしているのです。

そして、この映画内でイヴがどうしてもマーゴから奪い取りたかった「コーラ」という役を、マーゴは実はやりたくないと思っていました。

そう考えると、イヴが素直に女優になりたいことを打ち明け、マーゴにも筋を通した形でやっていけば、自然とマーゴはその役をイヴに譲り渡した可能性もあったのかもと夢想してしまいました。

ただ、イヴの生来の性格を考えると、「皆に愛されるイヴ」は幻想でしかないのでしょうね。

 

・愛すべき大女優マーゴと誠実な恋人ビル

 「愛されるイヴ」は幻想でしたが、逆に「愛されない自分」という考えに取り付かれてしまっていたマーゴは、本当は多くの人に愛される可愛らしい女性です。

この映画の大きな魅力の1つは、このマーゴのチャーミングさでしょう。

マーゴと恋人のビルは、マーゴの方が8つ年上のカップルで、いよいよ40歳となったマーゴには、自身の40という年齢やビルとの歳の差が重くのしかかります。

そこにきて、若く・美しく・女性らしいイヴを回りの人が褒めそやし、マーゴはいよいよ焦りや嫉妬を感じ始めます。

恋人のビルは、最初から最後までマーゴ一筋の本当に一途な男性で、陰でイヴに誘惑された際も、はっきりと突っぱねているのですが、自信をなくしているマーゴは、ビルの愛情も信じることができません。

女優として登りつめるために、自分は「女性らしさ」を捨ててきてしまった、自分には「女性らしさ」がないと思い込んでしまっているマーゴですが、恋人のことを思い続け、嫉妬したり、落ち込んだりする様は、恋する女性そのもので、多くの女性たちが共感すると思います。

そして、そんなマーゴと一途なビルが結婚の約束をとりつけるという帰結は、登りつめながらも、これからも愛を得られない予感をさせるイヴと大きな対比を描いているなと感じました。

 

・イヴと評論家ドウィット

イヴとともに「悪役側」に回っていたのが、演劇評論家のドウィットです。

ドウィットはイヴを「似たもの同士」としてなにかと目にかけ、彼女が登りつめるための手助けをします。

評論家というとわかり辛いかもしれませんが、新聞などに評論を書き、世論を操ることもできるような重要なポジションです。

ただ、イヴの手助けをしているからといって、ドウィット自体が悪いやつかというと、そうでもなく思えるのが不思議なところです。

ドウィットは、この映画で唯一、序盤からイヴの本性に気付いていた人物です。

そして、唯一イヴのことをやりこめた人物。かなりの切れ者です。

イヴと同じように醒めた目線の持ち主でもあります。

映画内では「似たもの同士」だから、とイヴに協力をしていますが、実際の理由は単にイヴがスターになる人物と見込んだというだけで、ドウィット自身のキャリアのためにイヴすらただ利用しているだけかもしれません。

イヴは登りつめるために手段を選ばない、野心のために周りの心情を省みない「悪女」ですが、ドウィットはさらにひやっとした雰囲気を感じさせます。

映画を見終わったあともイマイチ気持ちの流れが掴めないところが、ドウィットという人物をよくあらわしているのかもしれません。

 

 

全然まとまらなかったですが、2時間ちょっとでこれだけ色々気になるくらい、様々な視点が絡まる、「物語」を存分に楽しめる作品でした!

古い作品ももっと見てみようと思います!!